何千年もの昔から、カーペットの素材として使われてきたウール。
豊かな風合いと優れた機能を持つウールは、現在でもラグやカーペットの定番素材となっております。
反面、ウールラグはメンテナンスが大変なイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ウールラグのメリット・デメリットと、長く使うためのお手入れ方法について解説いたします。
ウール素材のラグ・カーペットとは
ウールとは牧羊などから採取される繊維のこと。
ウールの定義は広く、カシミヤやアルパカなど獣毛の素材を総称して『ウール』と呼んでいます。
とは言え、衣類などの表示では個別の原料で表記されることが多く、ウールと言えば『羊の毛』を示すことが多いです。
この記事でも、ラグやカーペットに使われることの多い『羊の毛』について解説いたします。
ウールはクリンプと呼ばれる波状の縮れがあることや、鱗片状のスケールに覆われているのが特徴です。
クリンプやスケールがあることにより、高い保温性や弾力性を発揮します。
その機能性の高さから、ウールは何千年も昔からラグ・カーペットなどの敷物に使用されてきました。
ウール以外のラグの素材について知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
ウールラグ・カーペットのメリット
まずは、ウールカーペットのメリットや魅力について解説いたします。
ウールラグの主なメリットは以下の5つです。
- 断熱・保温性
- 弾力性
- 防汚性・はっ水性
- 調湿性
- 燃えにくい
断熱・保温性
ウールにはクリンプがあるため、繊維の間に空気をため込みます。
クリンプによる空気の層が熱を伝わりにくくするため、保温性や断熱性が高いです。
ウールの熱伝導率の低さは化学繊維の1/5、綿の1/2と言われています。
ウールが冬用の衣類に多く使用されているのも、この高い保温性があるからです。
冬にウールのラグを使用すれば、底冷えを軽減し足元から温もりを与えてくれます。
弾力性
クリンプと呼ばれる縮れのあるウールは、弾力性に富んでいます。
クッション性が高いウールラグは、歩行量の多い場所や床に座って過ごす場所に最適です。
座っているとき、座っているときの足腰への負担軽減、階下への防音効果も期待できます。
また、バネのように弾力性のあるウールラグは、シワや型崩れが起きにくいことも魅力のひとつ。
テーブルやソファを乗せたことによるへこみや跡も、時間がたつと起毛し復元されます。
弾力のあるウールラグは衝撃を吸収する効果もあるため、転倒などのケガ予防として小さいお子様や高齢の方がいるご家庭にもおすすめです。
防汚性・はっ水性
ウールは防汚性やはっ水性が高く、ある程度の水分をはじくことができます。
これは水をはじく性質を持つ鱗状のスケールと、繊維にコーティングされたラノリンという脂質によるものです。
はっ水性が高いウールラグは、水やコーヒーをこぼしてもすぐには染み込みません。
拭き掃除がしやすいことから、飲食をするリビングやダイニングのカーペットとしても人気です。
余談になりますが、ヨーロッパの漁師たちが海に出るときに着用したとされるフィッシャーマンニットにも、ウール素材が使われていました。
はっ水性が高く、保温性が高いウールは寒く厳しい海上生活を支えてくれていたに違いありません。
調湿性
『呼吸をする繊維』の異名を持つウールは、調湿性の高さも魅力のひとつ。
ある程度の水分をはじきつつも、湿気は吸収するというユニークな特性を持つ素材です。
鱗状のスケールの隙間から、吸湿と放湿を繰り返すことで湿度を調節しています。
ポリエステルの約40倍、綿の約2倍の吸水性があり、繊維製品の中ではトップクラスです。
ウールは吸湿と放湿を繰り返し、湿度が60%になるように調湿しています。
湿気がこもらないことで、高温多湿を好む雑菌やカビの繁殖も抑えることができるのです。
そのため汗ばむ季節もべたつかず、清潔で快適にお使いいただけます。
寒い冬だけでなく、湿度の高い日本の夏でも使いやすいことはウールならではの魅力と言えるでしょう。
難燃性
ウールのラグは難燃性(燃えにくい性質)の繊維です。
ウールの成分は人間の髪の毛と同じたんぱく質。
繊維の中に窒素や水分を含んでいるため、火がついても延焼せず自然に鎮火します。
そのため、ウールラグの中には防炎マークのついている商品も多いです。
防炎規制の対象となる場所(高さ31m以上の建物や、病院、商業施設、宿泊施設など)でも安心してご使用いただけます。
ウールラグのデメリットと注意点
機能性の高いウールラグ・カーペットですが、デメリットが全くないわけではありません。
ここからは、ウールのラグ・カーペットを使用するうえで注意すべき点について解説します。
ウールラグのデメリットは以下の通りです。
- 遊び毛が出やすい
- においがする
- 水洗いが難しい
遊び毛が出やすい
ウールラグのデメリットとして、遊び毛が出やすいことが挙げられます。
遊び毛とは、ラグから発生するワタボコリのようなもの。
使い始めの頃に発生しやすいため、購入直後にはあまりの量に驚かれるかもしれません。
ウールラグに限らず、どんな繊維のラグであっても多かれ少なかれ発生します。
紡績糸(短い糸を撚り合わせて作る糸)であるウール素材は、特に遊び毛が出やすいです。
また、遊び毛は使用しているうちに遊び毛は落ち着いてくるものの、完全になくすことはできません。
定期的に掃除機を掛け、遊び毛を取り除いてください。
一方で、遊び毛にはラグに付着した汚れを排出する役割もあります。
ラグを美しく保つと言うメリットもありますので、メリット・デメリット含めウールラグの特性としてご理解いただけますと幸いです。
遊び毛につきましては、こちらの記事をご参照ください。
においがする
防汚性が高く、調湿性に優れたウールラグは、カビや雑菌などによる臭いは滅多に発生しません。
ですが、湿度が高くなるとウール本来のにおいが気になることがあります。
普段のご使用で、ウールのにおいが気になることはほとんどありません。
ですが、雨で地面が濡れると土の香りがするように、ウールラグに湿気がこもると羊特有の「におい」が出てきます。
雨が続く梅雨の季節になると、時々ウールのにおいが気になるかもしれません。
とは言え、においはウールの湿度が下がることで自然と収まります。
ウールのにおいが気になるときには、窓を開けて換気をする、除湿器を使うなど湿気を逃してあげるようにしてください。
水洗いが難しい
ウールは、化学繊維のように水洗いすることは難しいです。
ウール表面にある鱗状のスケールは、水分を含むと開く性質を持ちます。
スケールが開いた状態でもみ洗いをすると、スケール同士が絡まりあい毛羽立ちや収縮が発生してしまうのです。
この現象をフェルト化と言います。
そのためウールラグはご家庭で洗濯できないものが多く、丸洗いしたい場合にはクリーニング店に頼ることになるでしょう。
(洗濯表示が『水洗い可能』となっている場合は、ご家庭での洗濯が可能です。)
とは言え、ウールはもともと防汚性の高い素材。
日ごろから掃除機掛けやメンテナンスをしておくことで、クリーニングを利用する機会を減らすことができます。
ウールラグはダニやカビが発生しやすい?
ダニやカビは高温多湿な環境を好みます。
ウールは湿度を60%に保つ性質があるため、他の素材に比べて発生しにくいと言われています。
ですが、何事にも絶対はありません。
ご使用環境によってはダニやカビが発生してしまうことがあります。
日本は温暖湿潤気候に属し、年間を通して湿度が高い環境です。
そのため、ダニやカビの餌となる食べこぼしや髪の毛などの汚れがラグに付着していると、ダニやカビが繁殖する可能性もあります。
ダニやカビを予防するためには、正しくお手入れをおこなうことが必要不可欠です。
ウールラグ・カーペットのお手入れ方法
この章では、ウールラグ・カーペットのお手入れ方法について解説いたします。
においやダニの繁殖を防ぐにためにも、ウールラグは正しい方法で定期的にメンテナンスをおこないましょう。
日ごろのお手入れ方法
ウールラグは日ごろからお手入れをしておくことで、長く清潔にご使用いただけます。
まずは、ウールラグの基本的な掃除方法を2つ紹介します。
掃除機掛け
ウールは汚れに強い素材ですので、日ごろのメンテナンスは掃除機を掛けるだけで十分です。
週に1~2回を目安に、丁寧に掃除機掛けをしましょう。
ラグの毛並みを起こすように掃除機を掛けると、毛並みの奥に入り込んだホコリやゴミを落とすことができます。
強く擦ると繊維を傷めてしまうため、力を抜いて掃除機を掛けてください。
回転ブラシも毛足を傷める要因になるので、回転をオフにするか、回転ブラシを取り外して掃除機を掛けましょう。
粘着クリーナーも、ラグ表面についているゴミや髪の毛を取り除くのに便利です。
ただし、粘着力が強いとウールの毛足を傷めてしまう可能性があるので、掃除機を掛けてもホコリや髪の毛が落とせなかったときのみ使うようにすると良いでしょう。
拭き掃除
先ほど説明した通り、ウールラグは水洗いすることができません。
汚れが気になるときは、水拭きをしましょう。
蓄積した汚れを拭き取ることで、ラグの美しさや耐久性を長く保つことができます。
ウールラグは汚れに強いため、頻繁に水拭きをする必要はありません。
年に一度の大掃除のタイミングや、季節の変わり目など、汚れが溜まってきたと感じられるタイミングでおこなってください。
水拭きの手順は以下の通りです。
■ウールラグの水拭き方法■
- 掃除機掛けをする
- ぬるま湯に布を浸し固く絞る
- ②の布でラグ全体を叩き拭きする
- 乾いた布で水気を拭き取る
- 風通しの良い場所に裏返しで陰干しする
ウールラグは濡れた状態でこするとフェルト化してしまいます。
拭き掃除をするときは、ポンポンと優しく叩き拭きしてください。
ウールラグに水分が残っていると、においの原因となります。
乾いた布で水分を拭き取った後は、陰干しをしてラグに湿気が残らないようにしてください。
ラグを干すことが難しい場合は、半分ずつ裏返して風を通すだけでも十分です。
エアコンの除湿機能や扇風機などを活用すれば、より効率的に乾燥させることができます。
ラグの汚れをしっかりと落としたいときは、衣料用の中性洗剤を使って拭き掃除をしましょう。
中性洗剤をぬるま湯で薄め、固く絞った布で叩き拭きします。
その後、手順2に戻り水拭きで洗剤を落としてください。
ダニ・カビ対策方法
ダニやカビは、高温多湿で餌のある場所を好みます。
繁殖を防ぐためには、『湿度を低く保つこと』『餌を残さないこと』の2点が重要です。
ダニ・カビ対策として以下の3つのメンテナンスをおこないましょう。
- 掃除機掛け
- 部屋の換気
- ラグの通気
まず大切なことは、汚れを残さないこと。
日ごろから掃除機を掛けて、ホコリや食べこぼしが残らないようにしてください。
また、室内の湿度を下げることも大切です。
部屋をあけて換気をしたり、除湿機能を使って多湿にならないように気をつけましょう。
ラグは裏側にも湿気がこもりやすいです。
陰干しをする、半分ずつ捲るなど、通気してラグにこもった湿気を取り除いてください。
保管方法
ウールラグはオールシーズン通してご使用できますが、夏と冬でラグを敷き替えているご家庭もあると思います。
ラグは保管方法を間違えると、ダニ・カビが発生する、型崩れすると言ったトラブルのもとになりかねません。
翌シーズンも気持ちよくウールラグを使えるよう、正しい方法でラグを収納してください。
■ウールラグの保管方法■
- 風通しの良い場所に裏返しで数時間陰干しする
- ラグを干したまま叩き、ホコリやゴミを出す
- ラグの両面に掃除機を掛ける
- ラグをロール状に丸める
- ハトロン紙で包み通気性の良い場所に保管
保管中にダニやカビを発生させないためには、汚れと湿気を取り除いておくことが大切です。
保管場所はできるだけ通気性の良い乾燥した場所をお選びください。
すのこの上にラグを置くことで、通気性を良くし、湿気を低減することができます。乾燥材や防虫剤も入れておくと、さらに安心です。
1年以上の長期で保管する場合、半年に一度は陰干ししてラグの湿気を逃がすようにしましょう。
保管の際に折りたたんだり、圧縮袋に入れてしまうと型崩れしてしまう可能性があります。
ラグはロール状に丸めて保管しましょう。
おすすめウールラグ・カーペット
ラグは肌に直接触れるもの。
だからこそ、ウールの機能性や豊かな風合いを存分にお楽しみいただけます。
ここからは、当店自慢のウールラグ・カーペットをご紹介します。
ウールラグ
インテリアのアクセントとして、風合い豊かなウールラグを敷いてみてはいかがでしょうか?
ウールカーペット
機能性の高いウールは、全面敷きのカーペットとしてもおすすめです。
敷き詰めカーペットに関しては、こちらの記事をご参照ください。
まとめ
本記事では、ウールラグのメリット・デメリットについて解説いたしました。
ウールは牧羊などから採取される繊維のことです。
ウールのメリットは以下の通りです。
- 断熱・保温性
- 弾力性
- 防汚性・はっ水性
- 調湿性
- 難燃性
ウールにはクリンプと呼ばれる縮れがあり、弾力性や保温性に優れています。
丈夫で汚れにくく、オールシーズン通して快適にご使用いただけるのが特徴です。
一方で、ウールラグには以下のようなデメリットがあります。
- 遊び毛が出やすい
- 臭いがする
- 水洗いが難しい
遊び毛や臭いは、正しくお手入れすることである程度軽減することができます。
ウールは、デメリットを補って余りある魅力にあふれた素材です。
機能性と豊かな風合いを兼ね備えたウールラグをぜひお楽しみください。