高齢者の転倒や転落による事故は、家庭内で発生することが多いといわれています。
フローリングの硬い床は衝撃が大きく、高齢者は転倒によって骨折などの大怪我を負うリスクも高いのです。
転倒による怪我が原因で、介護が必要になるといったケースもあります。
転倒を予防し、転倒した際の怪我を軽減するのに役立つのがカーペットです。
クッション性の高いカーペットを敷いて、家族みんなが安心して過ごせる家を目指しましょう。
本記事では、介護職の経験もある筆者が高齢者のいる部屋にカーペットを敷くメリットとシニア向けカーペットの選び方について解説いたします。
高齢者の転倒事故のリスク
東京消防庁の救急搬送データによると、令和4年に緊急搬送された人のうち全体の約6割が転倒による事故が原因です。
転倒による事故は、住宅や居住場所での発生件数が過半数を占めています。
年代別に見ると、高齢になるにつれ転倒事故の割合は増えていく傾向があるようです。
出典:東京消防庁HP.「救急搬送データからみる日常生活の事故(令和4年)」.
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/nichijou/kkhdata/index.html
高齢者は加齢とともに筋肉が衰えてしまうため、家の中や平面な床であっても転倒のリスクが高くなります。
高齢者は骨粗しょう症の進行などによって骨がもろくなっているため、転倒事故が思わぬ大事故につながることも少なくありません。
股関節の骨折や大怪我を招いたり、入院や介護が必要になってしまうなど、その後の生活を一変させてしまう可能性があるのです。
私も介護職に従事していたときには、施設内で転倒して入院が必要な大怪我される方を何人も見てきました。
それだけでなく、怪我による入院で運動機能が著しく低下してしまい、自立した生活が困難になったり、車椅子生活を余儀なくされたりする方もいらっしゃいます。
フローリングなど硬いの床は転倒時の衝撃が大きく、当たり所が悪いと死亡に至るケースもあるため侮れません。
高齢のご家族に生き生きと健康に過ごしていただくためにも、家庭内における転倒のリスクを軽減しましょう。
高齢者に優しい床材カーペット
フローリングは、硬く滑りやすい床材。
欧米のように土足で過ごす分には問題ありませんが、靴下やスリッパだと滑ってしまい転倒するリスクが高くなります。
滑りにくく、クッション性が高い床材として知られているのがカーペットです。
この章では、カーペットが高齢者の住まいに適している理由について解説いたします。
滑りにくく転倒予防になる
カーペットは滑りにくい床材です。
これはカーペットを踏み込んだ時に生じるへこみが引っ掛かりとなり、抵抗力が大きくなるためと考えられています。
一方、木製のフローリングや塩ビタイルは表面の摩擦が少なく、カーペットに比べて滑りやすいです。
安全性を考慮するのであれば、リビングや個室だけでなく、廊下や階段などの移動経路にもカーペットを敷いておきましょう。
カーペットは高齢者の転倒予防だけでなく、ペットの股関節脱臼予防にも効果的です。
ただし、カーペットやラグが滑りやすかったり端がめくれていると、足が引っ掛かる原因になることがあります。
滑り止めを活用したり、部屋全体に敷き詰めるなど、簡単にずれないように工夫をしましょう。
衝撃を吸収する
硬い床材では転倒時に加わる衝撃が大きく、それが原因で怪我や死亡に至るケースも少なくありません。
特に高齢者は運動機能が低下により受け身が取れなかったり、加齢によって骨がもろくなっていたりするため、転倒による怪我が重篤化する可能性があります。
転倒を予防すると同時に、万が一転倒してしまったときの怪我を最小限にとどめることも重要です。
転倒時の怪我予防として活用できるのが、カーペットです。
カーペットはクッション性に優れた床材。
カーペットは転倒しにくいだけでなく、転倒時の衝撃も和らげてくれます。
日本カーペット工業組合によると、人間頭部モデルの落下試験を行った結果、多くのカーペットが安全線の目安であるG値100以下であることがわかりました。
フローリングやクッションフロアに比べて衝撃吸収力が高いことからも、カーペットは安全性の高い床材だといえるでしょう。
出典:日本カーペット工業組合HP.「技術研究報告」.
http://carpet.or.jp/publics/index/82/
底冷えを防ぐ
フローリングや塩ビタイルなど冷たい床に触れると、足裏の温度が低下して血管の収縮などが起きやすいです。
温度差が大きいとヒートショックによって血圧が上昇し、高齢者の場合は脳卒中や心疾患を引き起こす可能性もあります。
カーペットは毛足に空気を多分に含んでおり、フローリングに比べて断熱性が高いです。
熱伝導率が小さく、床の冷たさが伝わりにくくなっています。
寝室のベッドサイドや廊下など、居室との温度差の大きい場所や、足裏が触れる場所にもカーペットはおすすめです。
また、床暖房の上にカーペットを敷くと暖かさを感じるまでに少し時間がかかってしまいますが、電源を切った後も長く暖かさをキープします。
高齢者向けカーペットの選び方
高齢者の安全に考慮したカーペットは、一般的な住宅に敷き込むカーペットとは違う基準で選ぶ必要があります。
デザインだけでなく、機能性や敷き方などの実用面も考慮して選びましょう。
この章では、高齢者が安心して過ごすためのカーペット選びのポイントについて解説いたします。
カーペットの敷き方
高齢者のいるお部屋に敷くカーペットは、部屋全体に敷き詰めることをおすすめします。
なぜなら、敷き詰めカーペットは、部分敷きのカーペットに比べて床との段差が少ないからです。
運動機能が低下した高齢者は、膝が上がらず足を引きずるように歩く『すり足』状態になったり、歩幅が小さくなったりすることがあります。
そのため、部分敷きのカーペットだと、床とカーペットの小さな段差に躓く可能性があり、転倒のリスクが高まってしまうのです。
また、滑り止めのついていないカーペットを部分敷きにすると、カーペットで滑ってしまうこともあります。
カーペットは、部屋全体に隙間なく敷き詰めるようにしましょう。
部屋の出口にある段差もなくなり、部屋を出入りするときの転倒リスクも軽減できます。
部屋に凹凸がある場合や、既製カーペットだとサイズが合わないときはオーダーカーペットをご活用ください。
お手入れのしやすさ
カーペットを部屋全体に敷き詰める場合、家具などの下に敷き込むため容易に敷き替えることはできません。
長く衛生的に使える機能が重要になります。
撥水・防汚
撥水・防汚などの機能が付いたカーペットを選ぶと安心です。
いずれ介護が必要になったとき、食べこぼしや排泄など水性の汚れに関する問題はついて回ることになります。
撥水や防汚加工が施されていれば、水性の汚れが染み込みにくく拭き掃除も簡単です。
タイルカーペット
タイルカーペットは1辺が40-50cm程度のタイル状になっています。
そのため、傷んだ部分、汚れた部分のみを簡単に敷き替えることができます。
万が一、食べこぼしや嘔吐、排せつ物で汚れてしまったときにも、取り外して部分洗いが可能です。
介護も視野に入れて敷物を選ばれるのであれば、メンテナンスが容易なタイルカーペットをお選びください。
機能
カーペットは機能性も優れています。
転倒予防としてだけでなく、生活の質全体を向上させるアイテムとしてカーペットをご活用ください。
ここでは、高齢者が使用するカーペットにおすすめの機能をご紹介します。
抗菌・消臭
カーペットでも菌やウイルス対策ができるのをご存知でしょうか?
人間は年齢とともに免疫力が低下してしまいます。
免疫力が衰えると、風邪やウイルスによる病気にもかかりやすいです。
抗菌や消臭加工の施されたカーペットは、カーペットに付着した菌を吸着・分解することができます。
抵抗力の少ないお年寄や赤ちゃんのいるご家庭でも安心です。
また、万が一排泄に失敗した際にも臭いが残りにくくきれいな空気を保ちます。
防炎
防炎加工とは燃えにくく、燃広がりにくい加工のことです。
高さ31m以上の建物や、介護施設では、防炎カーペットの使用が義務付けられています。
サービス付き高齢者向け住宅など、高齢者向けの施設に入居されている方のお部屋には防炎機能付きのカーペットをお選びください。
また、高齢者が煙草を吸われる場合、防炎機能は火の不始末による火災の被害を最小限にとどめるのにも役立ちます。
高齢者向けのおすすめカーペット
この章では、ご高齢の方も安心して使用できるカーペットをご紹介します。
当店のオーダーカーペットは、追加料金なしでカーペットのサイズ加工が可能です。
段差ができないようお部屋に合わせてぴったりサイズに敷き詰めていただけます。
プルーフ
強力撥水効果を持ち、お手入れしやすいタイルカーペット『プルーフ』。
タイルカーペットは1辺が40-50cm程度のタイル状になっているのが特徴です。
1枚のサイズが小さく、カット加工も容易なことから、どのような形状の部屋にもぴったり敷き詰めることができます。
部分的に取り外して洗うこともできるため、介護が必要な高齢者のお部屋にも最適です。
バンジュ
消臭・防汚・撥水機能がついたお手入れのしやすいカーペット『バンジュ』。
厚さ8.5mmの短め毛足で、すっきりとした印象をお部屋に与えてくれます。
部屋の形状に合わせてサイズ加工・凹凸カット加工可能です。
細長い部屋、柱の多い部屋などの敷き詰めカーペットとしても適しています。
廊下敷きタイプのバンジュも人気です。
廊下の幅・長さに合わせて1cm単位でオーダーいただけます。
ベルーフ
天然素材ウールを100%使用したナチュラルな風合いのカーペット『ベルーフ』。
ウールは弾力性に優れた素材。
高密度に織り上げることで、高いクッション性を実現しました。
ウールは弾力性だけでなく、防汚性や断熱性、調湿性など自然ならではの豊かな機能が備わっています。
レモド
空間に上品さを与えてくれるベーシックなデザインのカーペット『レモド』。
レモドは生地にフッ素樹脂による撥水&防汚加工が施されており、汚れにくく、汚れを落としやすいです。
防炎加工付きですので、高齢者施設にお住まいの方もご使用いただけます。
コロエ
再生ポリエステル「スミトロン®」を使用した、地球にやさしいカーペット『コロエ』。
空気中の酸素を使用し、気になる臭いを水や二酸化炭素などの無害な物質に分解します。
ペット臭などの生活臭は勿論のこと、タバコ臭ホルムアルデヒドも吸収・分解可能です。
本記事のまとめ
本記事では、高齢者のいる部屋にカーペットを敷くメリットとシニア向けカーペットの選び方について解説いたしました。
滑りやすく硬い床材のフローリングは、高齢者の転倒事故のリスクを高めてしまいます。
高齢のご家族が安心して過ごせるよう、床材選びに配慮しましょう。
滑りにくいカーペットは、転倒予防に最適な床材です。
また、フローリングに比べてクッション性が高いため、万が一転倒した際にも怪我のリスクを軽減できます。
段差があると、つまづいてしまう可能性があるためカーペットは部屋全面に敷き詰めましょう。
お手入れのしやすさで選ぶなら、タイルカーペットの敷き詰めがおすすめです。
汚れてしまったときに部分的に取り外して洗うことができます。