1枚1枚心を込めて織り上げられたギャッベ。
自由な色使いやデザインに心を奪われた方も多いことでしょう。
初めて出会ったはずなのに、ずっと前から敷かれていたような。
そんな、手織りならではの温かみや懐かしさを感じさせてくれる敷物です。
本記事では、敷物専門店の店員がギャッベの特徴と魅力について解説したいと思います。
ギャッベとは?
ギャッベはペルシア語で「ざっくりした」「粗い」と言う意味です。
ギャッベはイラン南西部の山岳地帯に住むカシュガイ族の女性が織り上げる毛足の長い敷物のこと。
カシュガイ族はザクロス山脈に住む遊牧民族です。
ギャッベはカシュガイ族が暮らすテントの中で使われていました。
天然素材ウールを100%使用し、染料にも草木などの自然素材が使われます。
羊の毛を刈る作業から、染色、織りに至るまで全て手作業で作られるギャッベは、素朴で温かみのある風合いが特徴です。
ギャッベの歴史について
ギャッベはおよそ3000年くらい前から、暮らしの中で活用されていたと言われています。
春には砂漠で過ごし、冬になると山岳地帯へと移動するカシュガイ族。
険しい岩場でも使える頑丈さ、高い保温性・調湿性を備えたギャッベは、カシュガイ族にとって必需品ともいえるものでした。
丈夫で長く使えることから親から子へと代々引き継がれ、テントの中に敷いて使われています。
しかし、ギャッベは生活用品と言う認識が強かったため、長い間その価値は評価されていませんでした。
緻密で細やかな織りのペルシャ絨毯が普及しているイランでは、目の粗いギャッベは評価されにくかったのです。(それぞれの別の良さがありますからね。)
今から約80年ほど前に、ギャッベは絨毯商人によってようやく価値を見出されます。
個性豊かなデザインや使い勝手の良さが評価され、ギャッベは世界中へと広まっていったのです。
ギャッベはどこの国の敷物?産地の違いについて
先ほどご説明した通り、ギャッベはイランの敷物です。
イラン南西部のシラーズ山岳地帯に住んでいる遊牧民族によって織られています。
しかし一方で、『インドギャッベ』という言葉を耳にされたおことがある方もいるのではないでしょうか。
インドギャッベはイランギャッベを模倣して作られた敷物です。そのため、厳密にはギャッベではありません。
本場イランで織り上げられたギャッベはすべて手織りで作られますが、インドギャッベは機織り機によって作られます。
手織のギャッベより制作の手間や時間がかからないことから、イランギャッベよりも価格が安いです。
イランギャッベよりは劣ってしまうものの、ウールの持つ風合いや魅力を存分に感じていただくことができます。
イランギャッベを購入する前のファーストギャッベとして、インドギャッベを購入される方も少なくないようです。
ギャッベの7つの特徴と魅力
カシュガイ族の女性によって丁寧に織り上げられたギャッベ。
この章ではその魅力や特徴を余すことなくお伝えしていきたいと思います。
手織りの1点もの
ギャッベは天然素材を使用し、毛刈りから織りまですべての工程が手作業で行われます。
自由な感性によって手織りされたギャッベは世界に2つと同じものはない1点もの。
大量生産される使い捨てのものではなく、心を込めて人の手で織られたギャッベには何とも言えない温かみがあります。
直線に見えても少し揺らぎがあったり、色の中に濃淡があったり…。
ハンドメイドのギャッベは同じようなデザインに見えても、1枚1枚表情が違います。
そのため購入前には、ギャッベの実物をぜひご覧になってください。
当店のショールームでは、イラン産のギャッベを直接見て触れていただくことができます。
詳しくはこちらのページをご確認ください。
しっかりとした踏み心地
カシュガイ族も、日本人と同じ床座生活が一般的です。
ギャッベは山岳地帯や砂漠と言った厳しい自然環境でも床生活が快適になるよう、しっかりとした踏み心地をしています。
ギャッベの弾力の秘密は、ウールの特性である縮れと毛足の密度。
ウールの毛には縮れ(クリンプ)があり、クッション性に優れています。
弾力のあるウール素材を、高密度で織り上げることで豊かな踏み心地が実現するのです。
ウールの持つ調湿性・保温性
ウールは調湿性・保温性に優れた素材です。
梅雨や夏には湿気を吸収し、サラリとした手触りをしています。
べたつかず、湿度の高い季節にも使いやすいです。
冬には床からの冷気を防ぐことで、底冷えを予防します。
オールシーズン通して快適な空間を演出することができるのです。
また、ウールの毛並みには油分(ラノリン)が含まれており、水性の汚れは弾いてくれます。
そのため、ウールは汚れにくく汚れを落としやすいためメンテナンスも簡単です。
染料はすべて自然素材
ギャッベは自然素材100%の織物。
毛足に羊毛はもちろん、染料もすべて自然由来のものが使われています。
赤 | 茜(ロナス) |
黄 | ザクロ、ターメリック、サフランなど |
青 | インディゴ(藍) |
緑 | シャシール、青と黄の重ね染め |
白や茶色には染めていない羊毛の色が使われています。
化学染料を一切使わず草木染にすることで、深く味わいのある色合いが実現するのです。
天然の染料は均一にならず、一枚一枚少しずつ色ムラがあります。
1枚のギャッベの中でも色の濃淡があり、見る人の心を飽きさせません。
天然素材を使用しているため、敏感肌の方でも安心してお使いいただけます。
思いを込めた文様
ギャッベと言えば、ユニークで可愛らしい文様も魅力のひとつ。
ギャッベに下絵や図面はありません。
植物や風景をモチーフに、カシュガイ族の女性の豊かな感性によって自由に織り上げられていきます。
ですが、この文様をただのデザインで片付けてしまうのはあまりにももったいないです。
織り手の女性たちは、ギャッベの中に願いや思いを文様として落とし込んでいます。
例えば、荷物を載せて新しい土地へと運んでくれるラクダの文様には『成功』への願いが。
四角形の文様には窓や井戸と言う意味があり、『幸せが窓から舞い込んでくるように』という願いや『大切な水への感謝』思いが込められています。
オオカミの足跡の文様には、『厄除け』の効果があるそうです。
ギャッベの文様から遠いイランでの生活や、織り子さんの自由な世界観にぜひ触れてみてください。
季節を問わず長く使える
ギャッベは人の手で紡ぎ、撚った糸をさらに手織りされるため、高い耐久性を誇ります。
厳しい自然の中、大地の上に敷かれていたギャッベ。
丈夫なギャッベは親から子へ、子から孫へと代々受け継いで使い続けることができます。
上質なものなら100年使えるとも言われているほどです。
使うことで魅力が色あせることはありません。
むしろ長く使用することでツヤが増し、味わい深く変化していきます。
30年40年と使い込んでいくことで、家族の一員のようになくてはならない存在になるはずです。
ギャッベにデメリットはある?
ギャッベにもデメリットがないわけではありません。
購入する前にはメリット・デメリットのりょほうについて知っておく方が、購入後の後悔が少なくなります。
価格が高い
ギャッベのデメリットのひとつは、価格が高いこと。
ギャッベは小さなマットサイズでも数万円以上、ラグサイズともなれば数十万円することも珍しくありません。
金額だけ見れば、確かにギャッベはお高いと言えるでしょう。
ですが、その分ギャッベは耐久性に優れています。
メンテナンスをきちんとしていれば、30年、50年とお使いいただける敷物です。
なので、何十年と言う長い目で見たときにはギャッベが一概に高いとも言い切れません。
例えば30万円のギャッベを40年使ったとしましょう。
1年当たりに使う費用は、7500円になります。
一般的なラグを毎年買い替えても、ギャッベを40年敷き続けてもトータル的なコストに違いはないという事です。
それならば、本当に上質な一枚を末永く使い続けるのも一つの選択肢として良いのではないでしょうか?
匂いがする
天然素材ウールで作られたギャッベは調湿性に優れていますが、湿度が高い夏や梅雨の時期に羊毛特有のニオイがすることがあります。
このニオイの原因は、羊毛の油分(ラノリン)臭であることが多いです。
ウールは呼吸をする素材とも言われており、湿気を吸って吐き出すことで湿度を一定に保とうとする性質があります。
ですが、湿度が高すぎると吐き出す湿気の量が追い付かず、ウールの中に湿気がこもることでニオイが発生してしまうのです。
ウールに匂いが発生するという事は、裏を返せばそれだけ室内の湿度が高まっているという事。
ニオイが気になるときは換気や陰干しをおこなってください。
カーペットを半分めくり、そこに風を通すことで湿気を逃すことができます。
換気だけでなく、エアコンの除湿機能や扇風機なども効果的です。
重くて持ち運びづらい
高密度で織り上げられているため、他のラグに比べると重量があります。
ギャッベは遊牧民族がテントの中で使っていた敷物。
砂漠や山岳地帯でも快適に過ごせるように、長い毛足を高密度で織り上げています。
しっかりと厚みがある分、他のカーペットに比べて重量が大きくなりやすいです。
ギャッベの場合は夏と冬でカーペットを敷き替えるよりも、1年通して敷きっぱなしにすることをおすすめします。
丈夫で汚れにも強いギャッベ。
保温性・調湿性も高いので、夏は涼しく冬は暖かくお過ごしいただけます。
当店おすすめイランギャッベ6選
ここからは、当店自慢のイランギャッベをご紹介。
ギャッベは同じものが2つとないオンリーワンの敷物。
欲しいデザインが見つかったときは早めのご購入をおすすめします。
素敵な出会いがありますように…。
ペルシャギャッベ アマレ マット B-23634 | ペルシャギャッベ リーズ マット B-21550 |
ペルシャギャッベ アマレ ラグ B-23475 | ペルシャギャッベ アマレ ラグ B-22870 |
ペルシャギャッベ アマレ ラグ B-23473 | ペルシャギャッベ ラグ B-24059 |
この記事のまとめ
この記事では『ギャッベ』について解説をしてきました。
ギャッベはペルシア語で「ざっくりした」「粗い」という意味。
イラン南西部の山岳部に住む遊牧民族が織り上げた毛足の長い絨毯のことをいいます。
砂漠や山岳地帯の大地に敷いて使われていたギャッベは、しっかりとした踏み心地。
ウールの調湿性や弾力性を存分に味わっていただけます。
手織りで作られたギャッベは、どれも2つと同じものがない1点ものです。
月日とともに変化してゆく風合いを存分にお楽しみください。